全・半 二重人格

なかなか興味深い。

一度確かに私は死んだ。

だが生き返ってしまった。だが殺し方がわかっただけでも十分収穫ありだ。

私というのは何を指しているか記しておこう。

それは、こうして日記を書いている自分である。

携帯を手に取らせたり、オーディオ機器に触れさせたり、好き勝手に休んだり、とにかく命令を実行するのみであるはずだった私に対して別の要素となるものである。

だが殺されてみて気が変わった。この、日記を書くことさえ知らない私はなかなか思っていたよりも行動力に富んでいるようだ。

普段私には思いつきもしないことも平気で実行する。

いや、私については、正確には思いつき自体はあっても、実行出来ないか、或いは実行すること自体を何らかの概念で封じていると思われる。

だから、私は適当な時に自分を殺し、こいつを現れさせ、記憶を介して観察してみることにした。

それにしても、初めて殺された時は少なからず驚いた。多少怖くさえあった。

小学生の頃は、追加要素的な私はまだ弱かった。行動をとる権限も範囲が限られていた。そして、殺されなくても特に私を邪魔することはなかった。

だが追加要素のない状態に近い私は、独走がメインだ。

他のものは極力排除する。

だから放っておくと危険だった。

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小学生だった頃のある時、やはり独走とほぼ同じ状態だった時があった。受験を近くに控えて、基の私が強く現れている時だ。

その時ある友達が普段通りに冗談を言った。

冷やかしにも類する言葉だったがそう悪意のあるものではなく、私の出方を伺うものだった。

ところが時期が悪かった。

既に普段の対応など眼中になかった。

私はそれまで決してしようとは思わなかった行動を目のあたりにした。

ペンサイズのカッターを何の躊躇もなく取り出し、一瞬、何をするのかと聞こうとした私は思考を封じられ、その後カッターを逆手に持った私はそれまでにない全力疾走で目標を追った。

相手は足をサッカーで鍛えているものだから、私は一つ上の階まで追いつけなかった。

相手はこの時の私をそれ以前の私と同じだと思っていた。

大きな障害物があり、相手はこれの周りを回って方向転換しようとした。そしてその時一瞬私の方を振り返った。

まさか右手を振りかざすとは思っていなかったのだろう。

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現在の私というのは、普段命令外の行動を導く他に、基の私を押さえつける役割も兼ねるようになったものである。

だが他人排除の意志が強すぎたためか、基の私を押さえ付けるためには私の権限を強制的に増やす必要があった。

そうすると今度は、私の自由度が上がりすぎてしまった。

比較的ストレートに動く私と比較的立ち止まる私はどちらかが他方より強くなるとたちまち人を外れた行動に傾いてしまう。だがそれでも、どちらかというと立ち止まる私の方が人に近いため、こちらになら多少傾いても気がつかない。

そのせいで、気がついてみれば大分こちらに傾いていたようだ。

つまり今までの私は大分こちらに依存していたため、既に基の私だけで操るには手にあまるものがあったのだ。

だから基の私は最終的に元の私を呼び戻した。そして私も、それなら基の私を使っても平気だろうと判断したのである。

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