窮屈とも言える

祖父の胸の辺りの痛みは背骨のではなく左肩の辺りの骨の手術の際に使われたと言われる樹脂が外れて胸の辺りに落ちてきているように感じられるものであるらしい。私は少し勘違いをしていた。

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今日は私と母は叔父さんから色々な話を聞かせてもらった。私より一つ年下の従姉妹がEtonから帰ってきたのでその土産話などで盛り上がった。学習院生の特権は凄いらしい。普通なら行けないような所にも沢山行ったという。

叔父さんは官僚だけれども歴史的観点に秀でている。元々歴史的な話が好きで色々と調べているものだから、理系だったくせに並の文系には負けないほど世の中の原理について詳しくなっている。お陰で私まで色々と知りたくなるほどである。

世の中の話や歴史的観点を眺めた後、私の将来にまで考えを巡らせてくれた。

さらに祖父の事情についても、母の発言がきっかけになって話題にあがった。

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普段会えない人から、また、普段感じられない、考えもしない世界の話を受けて私は色々と思うところがあり、閉口してしまった。

思わずため息が洩れる。

この場に居た私にしか恐らくわからないかも知れない。この気持ちは忘れないようにしたい。

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叔父さんによれば今の祖父くらいの歳でも結構多くの人が昔の戦争の事情だとか色々なことを、忘れ去られないようにネット上に書き記しているらしい。

ならばうちの祖父にだって出来ないことは無いはずだ。

そうは思うのだが、祖父はいつもの通り寝ている。仕方なくとりあえず母に言ってみるのだが、案の定の回答が返ってきた。

もう母としては諦めてしまっている。というよりそんなことにはもうこれ以上構っていられないということだろう。許容量を上回った感じだろうか、もしくは祖父の究極とも言える気力の無さに圧されたかも知れない。

とにかく無理だと言われた。大好きだった時代劇も観ないし中毒のようだったトランプもやらないんだから何を言ったとしても本人に自分から行動を起こそうとする気力がない限り絶対に無理だという。

それはそうかも知れない。でもふと思った。それらは以前好きだったものだ。既に知っているものだからこそ、もうやる気が起きないだとか、飽きたとか思うことがあるのではないか。私は欝状態について何もわからないが、もしかしたら新しいことに対して興味をもたせることによってそれを原動力に出来るのではないかと思った。

母にはもうこのことを言っても希望は無かった。まぁやってみればわかるけどね、の一言だ。

私の立場を知った上で敢えてそう言って制したともとれるし、私の立場など全く眼中に無いのかも知れない。

私には、どうあっても祖父に命令めいたことは言えないのであり、それで、ただ希望だけ伝えたところで何れ程の効果があるのか。

それでも試すべきなのだろうか。今までのところ、祖父と私は悪くない関係でいる。だがそれは別段悪くする理由が無いだけだ。

母は祖父に色々と命令をしてきたこともあって、そう仲が良いようには見えない。

祖父の性格上、自分が良いと思ったことしか信じないといった類の頑固さがある。

私にはこれらの壁を越える手段が見えてこない。

私には、それに、当面の課題もあるのだ。

私は逃げ腰では無いつもりだが、同時に立ち向かう術も無い。

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祖父の趣味は旅行。

だが妻を亡くし、気力を失い、そして後の事を頼っていた私の父も亡くなり。

今更母が何処か行こうと言ったところでもうついていく気力はないと言っている。

――それはわかっている。

だから、私でさえそれを感じると堪らないのであるから、無意識にそれを直接に意識することは避けているのであって。私も一応わかる。

でもわからない。

妻を亡くした祖父と、ほぼ同時に夫を亡くした母の両者の気持ちの何かがわからない。

ずっとそれまで一緒だった、それも、私の今までの人生の1.5倍とか2倍なんていう時間を共に過ごした人を亡くすと何がどのように変わるのだろう。

正直に言えばわからない。

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ある占いによると、私には「拡張自尊」の本能があるらしい。何かと何かをつなげて、世界を広げるという事に使命感をもち、それに対して喜びを感じるとか何とか。

そこでもまた、リクルートの検査と同じような職業が適職とされていた。

言われてみれば私は確かに物事を関連付けるのは好きだし、話を機械の事に絞れば、あれこれつなげて、出来ることを増やそうとはする。

でも少し考えてみればそのくらいは誰でも共通して言えそうだ。

でも今はこれを信じて、この家の拗れを何とかしたいところである。

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