自転車

合宿や学会などで現地に向かうときの交通手段として、普通は電車等に乗るものだというのは一応知っている。

しかし、快適なNAISTライフを送るために、入学時に少し奮発して手に入れた自転車がかなり高性能だったばかりに、自転車にとってはかなりの長距離となる道を走ることに興味を引かれるようになった。考えてみれば、私は自分の持ち物の限界を試すことに興味を持ちやすいのかも知れない。とはいっても、走るためだけに走ることには普段あまり興味がない。

そして、今のところ(ちゃんと別の目的があり、走ることだけで1日が終わってはならない条件下で)自転車で走ったときの最長記録は約37km(約2時間)である。
正直、この距離を走るのは自分の電動自転車でも楽ではなかったし、自分(と自分の自転車)くらいにしかできないだろうと思いたいところだった。ところがこの時は一緒に同行してくれた研究室の同期の仲間がいて、彼は何の仕掛けもないママチャリでついてきたのだった。

時は流れ、先日のIWPTにも自転車で行っていたのだが、その後Kevin先生から冗談半分な感じでNLP2014も自転車で来ますかと聞かれて、それはさすがにいくらなんでも逆立ちしても不可能だろうと思ったものだった。

しかしその後どうしても気になって少しだけ真面目に実現可能性を計算してみた。ただし、言うまでもなく自転車は体調や天候や道路状況によって時速が大きく左右され、あまりまともな試算はできない。実際、37kmを走ったときも行きと帰りで倍近く時間が変わった。行きは計算より速いくらいだったが、帰りの方は酷く遅かったのである。今回の計算も多少の遅れマージンをとりつつも調子が良くてどれくらいかを見積もろうとしている。

まず、GoogleMapで徒歩の最短ルートを出してみる。すると約1320km、254時間らしい。もしも眠らずに歩き続けることができたら、10日強で着ける。もちろん無理だが、もっとかかるかと思っていた。
仮に睡眠や風呂の時間を合わせて1日に10時間とったとする。仮に1日に3回の食事と休憩をとって合計3時間だったとする。一日中歩くのは相当しんどいと思うが、残りの11時間を全て歩くのに充てたとすると、24日で着く。自転車はさすがにこれより遅くはならないので、これが自転車の場合のワーストケースになりそうだ。さすがに24日もかけて行く気にはならない。何日目かの時点で、それまでの時間と距離から残り時間を計算してそんなにかかるようなら中止するだろう。

普段通学時の私の平均時速は約20kmで、合宿時に初めて挑む道で37km走った時の平均時速が約17km、先日の学会での平均時速は約13.8kmだった。車での走行時間と道路状況・道路選択の関係と同様に、直線を走り続けられるとか、道がわかりやすいといった好条件が揃わないと遅くなる。経験上最速で平均時速20km程度で、最低で平均時速10km程度といったところだろうか。実は電動といっても、最高時速は全然大したことはなく、代わりに初速や最低時速が大きく底上げされる分、速くなったように感じられるだけである。これは、電動自転車があえて最高速度があまり出ないように設計されているためであり、理論的には法定速度を大きく超えることも技術的には可能で、海外にはそういう製品もある(もちろん日本で乗れば捕まる(が、原付としての基準を満たすものは、登録して原付としてのマナーで乗れば乗れるらしい))。

適当に平均時速15kmを仮定してみると、1320kmは88時間で走れることになる。もしも眠らずに走り続けることができたら、4日で着く。これ以上はどんなに逆立ちしても早くできない。

実際は1日どのくらい走り続けられるのだろうか。電動とはいえ無力では走れないので、多少は力を使う。37km走った時は多少は疲れた覚えがある。とはいっても、その疲れの程度は数倍になっても一日の力を使い切るほどではなかったと思う。歩きの場合と同様に11時間を全て走るのに充てたとすると、1日に165km走るので、8日で着く。

途中、丸一日休みたい日や悪天候の日も出て来るかも知れないので、わずかに余裕を足すとして10日用意すれば行けそうな気がしてくる。それなら、ぎりぎり許容できなくもない…だろうか?単に目的地に行くことしか興味がなかったら我慢ならないかも知れない日数だが、旅行としてはなんとかならなくもない日数に思えてくる。常に漕がなければならないが、逆立ちしても不可能とまでは言い切らなくても良い気がしてくる。それでも往復はしたくないが。

100歩どころでなく譲って時間は許容できると仮定しよう。しかし、それでも電動自転車に特有の問題がある。バッテリーがそんなに持つわけがない。これも、温存して走ろうとすればかなり走れるのであまりまともに見積もれない。だが、それなりに計算できなくもない。37km走った時は、温存しないと電池切れした。温存しない場合は、20~25kmくらい走ると電池切れしてしまう。電池消費量は経験的には走行距離に比例し、道路状況の影響はそこまで受けない。電動自転車は速度の下限が高めで上限が抑えられているので、大体安定した速度で走るため、電池消費量は走行時間にも大体比例すると考えることにする。

温存というのは、単に電源を切って走ることである。完全な平地か下り坂で無風あるいは追い風ならできるのだが、向かい風あるいはわずかな上り坂になるだけで、漕ぐのに普通の自転車の倍ほどの労力が必要になる。少し急だと思える上り坂なら、電力なしでは発進不能なほどペダルが重くなる。だから電池が切れた状態で走行を続けることは基本的にはできない。バッテリーの計算が必要になる。

今積んでいるバッテリーは最初からついていた標準バッテリーのSバッテリーというもので、別売でSの2倍の容量をもつLバッテリーも手に入れることはできる。ただし価格がネックで、Lバッテリーともなると3万円もする。電動でない自転車が買えてしまう。走行距離はバッテリーの容量を示すAh表記と大体比例する。Sバッテリーは4.3Ahなのに対して、Lバッテリーは8.9Ahになっている。そのためLはSの2倍くらい走ると言われている。

正直Lバッテリーでは1個買うのもしんどいが、ここは旅費だと思って1個買ったとしても、1個では全く足りない。毎日、就寝時に宿で充電させてもらえたとしても、1個ではSの2倍の4時間くらいしか多分走れない。今持っているSと合わせても6時間。そんな調子では目的地まで半月以上かかってしまう。これは個人的には許せない。

バッテリーを何とかする手段は3通り考えられる。一つは、一日に必要な数のバッテリー(と充電器)を持つ方法だが、10万円近くかかり、そもそも1回やったら2度とやらないような試みなので全力で却下したい。

二つ目は、走りながらバッテリーを充電する方法。電動自転車には回生充電機構をもつものがあり、下り坂で充電したり、エンジンブレーキならぬモーターブレーキを使って充電したりできるのだが、生憎この機能がついた電動自転車は普通の電動自転車のさらに倍くらいの値段だったのでさすがに手を出さなかった。ちなみに今乗っているのはYAMAHAのPASシリーズのCITYで8万円くらいだった。自転車の機能を使う充電はこの時点でできないし、できたとしても走行距離が最高で2倍くらいになるくらいで、電池切れが避けられるわけではない。

走りながらバッテリーを充電する方法はもう一つ考えられる。バッテリーを2つ所持し、使っていない方を何らかの力で充電する方法だ。震災後の世の中の意識変化もあるのだろうが、太陽電池が意外と実用的になってきている。以前は手に入れることもそこまで容易でなければ、発電量も大したことなかったのだが、今では、大したことないなりにも幾らか良くなっている。

特に入手性は今は相当に良い。自転車ではないが、モバイル用途では十分に実用レベルになっている。取り出せる電圧・電流はインバータやDC/DCコンバータを使って電池の電圧にしたり家庭用100Vの電圧にしたりできる。
http://kaden.watch.impress.co.jp/docs/column/fujilabo/20121025_568196.html

単結晶にこだわるとしても、
http://www.so-lar.jp/products/detail.php?product_id=5
http://www.chikuden-sys.com/category/solar-panel.asp?id=2914
このあたりは使い勝手が良さそうだ。しかしまだ大きい。

http://www.system-talks.co.jp/product/sunpad40_nr.htm
このあたりのフレキシブルタイプなら、頑張れば何とか自転車に積めるかも知れないが…。

太陽電池を積んで走るというのはコンセプトとしてはとても楽しいのだが、大きすぎる割に発電量が今一つで実現可能性がもう一歩及ばない感じはする。本気で太陽電池でまともに発電したいなら、太陽電池を大型の飛行機の形に作り、電源ケーブルで繋いだ状態で上空に飛ばすと良いかも知れない。ハンドル操作やブレーキ操作に従って追従させないといけないし、あまり現実的には思えないが…。他に、風力を使う手も無くはないのかも知れないが、明らかに走行用のエネルギーを消費するし、何より外見が魔女宅のあれになるので却下したい。

三つ目の手段として、純正バッテリーの改造をも厭わないならば、バッテリー自体を安くて大容量のものにする方法が考えられる。
最近はスマートフォンが十分に普及したために普通に使っているだけの人でも電池がろくにもたなくなり、モバイルバッテリーが当たり前に普及するようになってこちらも入手性が良くなった。

http://www.lookeast.co.jp/products/le-cnt40k.html
この手のバッテリーはもはやモバイルだけでなく100V電源も供給できる。1年以上前、私が10000mAh級のバッテリーを手に入れた時は、それでも破格の容量だと思っていたが、今はさらに突き抜けたものが出てきているようだ。

http://sugoibattery.com/
このどや顔のすごいバッテリーにいたっては75000mAhとうたわれている。冷蔵庫が7.8時間も動くすごさだ。

ここで、残念ながらmAのmは1000分の1だからということで単純に75Ahと考えて自転車バッテリーの4Ahと比較してすごいと思ってはいけないという落とし穴がある。そうであってくれたならこれ一つで万事解決なのだが、多分そこまで世の中甘くない。モバイルバッテリーは3.7V換算で表記が揃えられているので、3.7×75=277.5Whという容量だと思っておく。ここで、自転車のLバッテリーは定格25.9V 8.4Ahとかなので25.9×8.4=217.56Whになる。一応、すごいバッテリーはLバッテリーを上回る容量をもってはいるものの、容量も価格も大体同じで、意外と嬉しくない。太陽電池を直接接続して充電できたりモバイル機器が充電できたりする嬉しさはあるが…それでも太陽電池によるアシストで11時間はもたないだろう。

安いバッテリーと言って思い出すのは、自宅サーバーにも用いているUPSのバッテリー。
http://www.soundhouse.co.jp/shop/ProductDetail.asp?Item=233%5EUPSB2000%5E%5E
これは12V 9Ahということで、多分108Wh。今手元にある自転車用Sバッテリーが定格25.9V 4.05Ahで105Whくらいなので、大体置き換えられる容量だと思うことにしてみる。すると、Sバッテリーも25000円くらいするので、2000円のこちらは10倍以上も安い。今のバッテリーで良くて2時間程度走れるので、11時間走りたければこれを5個買えば良い。1万円の出費で済むわけだ。

しかし、鉛蓄電池は重い。5個も持ち歩くとそもそもかさばるし重さは12.5kgにもなる。自転車の荷台に収まるサイズとしてもぎりぎりかも知れない。

と、ここまできてなぜ気づかなかったのか。車用のバッテリーはどうか。
http://calamel.jp/go/item/60548536?ref=n&gclid=CO34ls6CjbsCFQlZpQodqWQAsg
中古バッテリーなら3000円台からある。容量も55B24L/Rなら12V 45Ahで、1つだけでSバッテリーの5個分に近そうだ。ただしこちらも13kgでさらに重い。

そもそも充電はどうするのか。小型の蓄電池なら
http://home.j00.itscom.net/jq1ibi/radio/PbCharger.htm
のような方法でできそうだが、大型蓄電池はACアダプタで何とかできるレベルではない気がする。PC用の電源ユニットを使えば何とかなりそうだろうか…。しかしこんな蓄電池とPC用電源を自転車の荷台に搭載するのか…?そしてそれを宿に持って行って充電するのか…?

やはりUPS用バッテリー5個(あるいはそれ以上)+大容量ACアダプタ+充放電回路の自作が一番現実的だろうか。とはいえ、バッテリー問題についても絶対に不可能とまでは言えなくなってきた。

一応結論としては、絶対に不可能とまでは言い切れないし、半月旅行に費やせるほど余裕があったらやらないとも限らない、という感覚になった。
これまで挙げた以外にも、165kmおきに宿を見つけておかなければいけないとか着替えとか雨対策とか雪対策とか他にも色々困難は待ち受けているはずだが、意外と面白いかも知れないと思ってしまうあたり、私も父の血を継いでいるのだなと思える。父は1週間以上の山岳縦走など長期行程の計画を立てるのが好きだった。思えば兄はツーリングが好きだったし日本一周してた気がする。万が一やるとしたら私は体調と命だけは何よりも優先して絶対に守ろうと思う。そもそもやるべきではないのだが。

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